ベイビーバギー結成以来ずっと年越しライヴに参加してきたけれど、今年はお休みして静かな年末を過ごしている。年越しライヴをしないというのは、なんだか前線から退いたみたいな気がして寂しいんだけど、まあ、みんなで決めたことだからしょうがない。でも今年やらないと、たぶん来年も面倒くさくなって、それが当たり前になるのだろう。寂しいなんて思うのは今回だけ。そんなもんだ。来年のベイビーバギーはどうなるのだろう。今年みたいに細々と活動を続けるのかな。個人的にやりたいことはたくさんあるんだけど、そのうちいくつできるだろう。時間は加速度的に速くなっていくから、後悔しないように頑張っていきたい。
何かしなくちゃいけないと思うときに、何もしないということ――志水辰夫の『みのたけの春』(08年、集英社)を読んで、そんな生き方を自分はできるだろうかと考えた。時代小説に転向して2作目。時は幕末、山陰の小さな農村で暮らす清吉は、病身の母と借金を抱えながらつましい暮らしを送っていた。だけど維新前夜の騒乱はそんな田舎をも巻き込もうとしていた。京都へ出て行こうとする仲間たち。そんななか清吉は――。
この風景のなかに、自分のすべてがあるといまでは思っている。すぎてみれば、人の一生など、それほど重荷なわけがない。変わりばえのしない日々のなかに、なにもかもがふくまれる。大志ばかりがなんで男子の本懐なものか。
僕は清吉のように生きられるだろうか。たぶん、いまはまだ、無理だろう。だけど、いつかこのように思うときがくるのだろうか。