お笑いなどで間違いなくウケる手堅いネタを「鉄板ネタ」などというが、最近の広告業界で鉄板ネタといえば「ブランド化」だろう。僕がクライアントに出す企画書には必ずといっていいほどこの単語が出てくる。たとえば「びーびー餅」という和菓子を作っている会社にたいしては、「それはたんなる商品名であってブランドではありません。ブランド化しましょう」という具合だ。ほどんどのクライアントは「どうやって?」と興味を示す。こうなればもうこっちのフィールドで話を進められる。
川島蓉子『ブランドのデザイン』(09年、文春文庫)は、サントリーの「伊右衛門」「ウーロン茶」、キューピーの「キューピーマヨネーズ」、資生堂の「マジョリカマジョルカ」「クレ・ド・ポー・ボーテ」などを取り上げ、どのようなブランドが人々に愛され、長く残っていくのかを探る。それぞれの誕生から成長の軌跡が取材を通して丁寧にトレースされていて、取り上げられているブランドについてとても勉強になった。ただ淡々と書かれているせいか、読み物としては楽しめない。大企業のブランドだけではなく、小さいながらも成功したブランドも取り上げてほしかった。ブランドは大企業だけのものではないのだから。