いい音楽ができるサイクル

ここにちょくちょくCDレビューを書いているわけだけど、そのCDってネットからタダでダウンロードしてるの?――と訊かれることがよくある。たぶんよっぽど貧乏か、怪しい人間だと思われているからだろうが、法を犯してレビューを書くようなことは一切していない。CDを買うか、有料ダウンロードか、ごくたまにレンタルか。タダでダウンロードしようと思えばいくらでもできるけど、それをしないのは、法を遵守していることはもちろんだけど、むしろ、アーティストに対して音楽を聴いたことの対価を支払いたいという気持ちがあるからだ。いま音楽ビジネスが大きく変わろうとしている。CDの売上はピークの98年から比べて約半分になり、代わりにiTunesなどのダウンロード販売が急増した。それによってレコード会社やコンサートのあり方も変わろうとしている。そうなるとお金の流れや、著作権のあり方なども変わらざるをえないだろう。そしてそのときには、対価を支払いたいという気持ちがベースになるべきだと思うのだ。たとえば、僕らアマチュアのミュージシャンがライブでプロの曲を演奏し、それを録音・録画してYouTubeなど動画共有サイトにアップすることは違法行為にあたる。演奏すること自体は、ライブハウスが利用料を支払っているので問題ないが、ネットにアップすると違法になる。日本で流通している音楽の98%はJASRACが著作権を管理しているが、JASRACがそういう行為を認めていないからだ。サイト側に勝手に削除されても一切文句は言えないし、訴えられる可能性だってないわけではない。ベイビーバギーでは過去に何曲かプロの曲を演奏したが、それをアップしたことは一度もない。たとえ録画していても、それだけを抜かしてアップしている。こうしているのは、違法だからというより、プロの曲を演奏することの対価を支払うシステムが整備されてない現状において、それを行うことは、アーティストや楽曲に対して失礼だと思うからだ。そのアーティストが、その曲が好きだから演奏するわけだが、それをアップすることは、大げさにいえば裏切りになるのではないか。誤解してほしくないのだが、こう書くのは、なにも違法行為を糾弾したいからでは、けっしてない。アップすることの“正の影響”――たとえば、ネットを見てその曲を知り、CDを買うといったプラス面があることも認める。問題なのは、仕組みが整っていないことだ。たとえばJASRASと同じ音楽著作権管理会社であるイーライセンスやジャパン・ライツ・クリアランスはYouTubeと契約を結び、利用料がアーティストに支払われる仕組みを構築した。これによりアマチュアのアーティストは、合法的にアップすることができる。ただもちろん一律だから、いちおう合法ではないものの、「対価を支払いたいという気持ち」は反映されない。理想的なのはこうだ。僕らは、プロのいい曲を聴かせてもらったから、演奏させてもらったからお金を払い、プロは、それをインセンティブに、また資金源にして、いい曲を作る。これからの音楽ビジネスでは、こういうサイクルが必要なのではないだろうか。

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