おくりびと

数年前、能登に住んでいた祖母が亡くなったときのドタバタは、忘れられない思い出だ。最近の葬儀は葬儀屋にすべて任せてしまうものだが、田舎では村の人たちが集まって行うところもある。さすがに火葬は火葬場で行うが、少し前までは火葬も裏山でやっていたという。とはいえ、慣習としては残っていても、それを伝える人たちが逝ってしまい、どうやっていいのかわからないという事態が起こる。祖母の葬儀はまさにそんな感じだった。

祖母の身支度をし、棺桶に入れ、通夜を行う公民館まで運び――と書くのは簡単だけど、実際に行うのは容易ではない。誰が、どんな格好で、いつ、どのように行えばいいのか。言う人によって違うし、どの情報を信じていいのかわからない。一般的にはこうだけど、ここでは昔から――なんて言われたらお手上げだ。で、静謐に執り行われるはずの葬儀が、さえないコメディ映画のようになってしまったというわけ。

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映画『おくりびと』(08年、日本)を観て、やっぱり最期の旅立ちはこうだよな――と、あのドタバタを思い出した。まあ、あれはあれで祖母も笑って見ていただろうけど、どうせならこのように送ってあげたかった。監督は滝田洋二郎、出演は本木雅弘、広末涼子ほか。アカデミー賞の外国語映画賞を受賞したということで、劇場で観た人も多いのだろう。納棺師という職業をフォーカスした作品だが、日本人の死生観を表現しつつ、じめじめとした暗い感じではなくエンターテイメントとして仕上がっているのは感心した。ただ、安っぽい脚本や演出が目に付いた。ここまでドラマっぽくしなくてもよかったと思う。とはいえ、ほかの日本映画と比べれば志も高く、見る価値はじゅうぶんにあるだろう。おすすめ。
◆公式サイト http://www.okuribito.jp/

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