ミレニアムというミステリ

密室と化した孤島、人間消失、暗号、見立て殺人、いわくありげな一族――キーワードだけを見ると、ヴァン・ダインやエラリー・クイーンなどの本格ミステリを思い浮かべるだろう。日本のいわゆる「新本格」ファンなら、綾辻行人や有栖川有栖、二階堂黎人を想起するかもしれない。過去に書かれたものであろうが、現代に書かれたものであろうが、大時代がかった道具立てであることには違いない。

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上 ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 下

スティーグ・ラーソン『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』(08年、早川書房)は、スウェーデンを舞台にしたアクチュアルなテーマを扱った現代ミステリだが、キーワードだけを見ると古典的な本格ミステリのようだ。経済ジャーナリズムの月刊誌『ミレニアム』の共同経営者にして記者の主人公が、ある大企業の前会長から36年前に起きた事件の再捜査を依頼されるが――。本作は3部作で、これが1作目。全世界で800万部を突破したベストセラーだそうだ。しかし残念なことに、作者のスティーグ・ラーソンは1作目が世に出る前に50歳という若さでこの世を去っている。この第1部は本格ミステリ風だが、第2部は警察小説、ノワール風で、第3部はスパイ・スリラー、法廷小説風だそうだ。本の帯には「今世紀最大のミステリ」と銘打たれているが、これだけミステリの要素が詰め込まれ、かつ優れた現代小説に仕上げられた小説は、たしかに他にないだろう。一気読み間違いなし。おすすめ。

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