所有から共有へ

小鳥ピヨピヨの「高校生は、音楽CDのことをなんと呼ぶか?」というエントリーが話題になっている。最近の高校生は、音楽CDのことを「マスター」と呼ぶらしいのだ。

つまりこういうことです。例えば、クラスで誰かが、
「おーい、浜崎の新しいアルバムのマスターゲトったぜ」
と言います。そしてクラスの子全員に回覧して貸します。
CDを受け取った子は、iTunesか何かにそのアルバムを取り込んで、次の人に回します。
回覧が終了したら、そのCDはポイ。
もうパソコンに取り込んだから、不要なのです。

こういう感覚なんだろうなということは頭では解るけれど、肌感覚としてはやっぱり解らない。いずれ音楽は手持ちのデバイスにダウンロードすることもなくなり、オンラインで聴くようになるだろうし、そうなったら「マスター」すらも必要じゃなくなるのだろうけど、それでも僕はなんらかの形で《所有》したいと思うだろう。僕はこの「所有」ということが、今後、あらゆることを考えるうえでのキーワードになると思っている。これまでは消費といえば所有だった。これからは共有。この感覚にいかにシフトするかが、今後の課題になっていくだろう。

ついに――というか、ようやくというか、YouTubeがJASRACと音楽著作権の二次利用に関する包括許諾契約を締結した(ITpro「YouTube、JASRACから音楽著作権の利用許諾」)。これによりJASRACが管理する楽曲を二次利用した動画を投稿することができるようになった。これまではライブでプロの楽曲を演奏し、その動画をYouTubeにアップすることは違法だったし、失礼だという思いがあったからやってこなかったが、これで解禁ということだ。ただ、それでもまだシステムとしては不十分だと思うし、音楽ビジネスとしてはまだまだ過渡期なのだろう。

新潮 2008年 11月号 [雑誌]

第40回新潮新人賞受賞作、飯塚朝美「クロスフェーダーの曖昧な光」(『新潮』2008年11月号)を読んだ。作者は現在25歳の女性で、調べたら金原ひとみと同い年。もうこういう若い子たちの時代なのかな――と思うとせつなくなる。僕も作家を志したときがあった。もう10年以上も前だ。さておき、読んでおもしろかったのは、この作品自体じゃなくて、選評。ここまで選考委員みんなに酷評されるというのもめずらしいのではないか。桐野夏生「図式的に過ぎる。図式の上に図式が加えられ、息苦しいだけで、図式を繋ぐ芯が見えてこない」、福田和也「『これはなんとしても受賞させなければ』というような義務感を醸成するような作品は、残念ながら一つもなかった」、町田康「今回は低調で、受賞作なしが妥当という意見も多かった。これは主催者にとっては不幸だが、候補者にとってはラッキーな事態である。なぜならライバルが少ないからである」、松浦理英子「積極的に推したい作品がなく、つらい選考会になった」、浅田彰「(本作が)有力候補として残ったのは私には驚きだった。古色蒼然たる擬似宗教的・擬似文学的な紋切型に基づいた薄っぺらなつくりのもので、まったく評価できないと思っていたからだ」――。推したのは桐野のようだが、その桐野にしても評価しているわけじゃないし、これではせっかく受賞しても作者は喜べないだろう。「良くない」と評価するのはポジション的に安全だし、その安全地帯から、自分の文学的教養の高さをアピールするような行為を「選評」と呼ぶべきなのか。たとえ気に入らないとしても、選んだのだから、それなりに評価するべきだろう。どうしても気に入らないのなら、必死に反対するべきだし、それでも受け入れられないなら、選考委員を辞退するくらいの気概が必要なのではないか。

「所有から共有へ」への4件のフィードバック

  1. いやいや、MP3で持つことは間違いなく所有ですよ。そうじゃなくて、Napsterとか、Pandraとか、完全にオンラインで聴くようになるだろうということです。

  2. MP3などの圧縮音源なんて所有にはならん。

    筆者殿は音楽やってるみたいだけどそうは思いませんかね?
    物の創り手ならばそんなものは(実際CD等もデジタルだし圧縮音源といえるかな?)著作権を侵害する劣化した粗悪なコピーでしかないと思ってほしいです。

  3. 音楽はまあ多少かじっている程度なので「物の創り手」なんていえるかどうかわかりませんが、僕はまったくオッケーですね、MP3。音が良いに越したことはないのでしょうが、良い音を極めようという意識はありませんし、実際、聴いてもよく解らないので。むしろ著作権を侵害されようが、劣悪なコピーであろうが、より多くの人に聴いてもらいたいですね。たぶんプロのアーティストでもそういう人が多いから、MySpaceのようなサイトが成立するのではないでしょうか。

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