最後の落語家-立川談志『談志 最後の落語論』

落語ブームなんだそうだ。テレビでは落語家が主人公の連続ドラマ『タイガー&ドラゴン』やNHKの朝ドラ『ちりとてちん』が放映され、書店には落語を特集した雑誌が並んでいる。寄席も混み合っているそうだ。このブームが今後も継続するのか一過性で終わるのかはわからないが、落語が「古典」として見られているかぎりは、あまり長くはないのではないかと思う。落語を現代のものとして見ること。つまり落語と現代のいわゆる「お笑い」とを同じ枠組みで見ることが重要なのではないか。だけどこれはそれほど簡単なことではない。見る側の教養の問題もあるが、なにより落語家が落語というフレームに閉じこめられているように思えるのだ。落語家でありながら落語の枠にとらわれず、人を笑わせることを志す。それができる希有な存在が、立川談志だろう。

談志 最後の落語論

立川談志『談志 最後の落語論』(09年、梧桐書院)は、談志による書き下ろし「談志 最後の落語三部作」の第1弾で、「落語に対する能書きを本にするのはこれが最後になるかもしれない」(本書まえがき)そうだ。「論」とはいっても体系的にまとめたようなものではなく、飲み屋で談志から落語の話を聞いているようなものだと思ってもらえればいいだろう。「落語とは、人間の業の肯定である」という独自のテーゼから入り、落語に対する思いをつれづれに書き残していく。進むにつれてぐだぐだになっていくが、そんなことはどうでもいい。談志の声に耳を傾けることが重要なのだと思わせる力がここにはある。同じ時代を生きるものとして、リアルタイムに談志の落語論を聞きたいと思う。

そういえば談志はM-1グランプリの審査員をやっていたが、談志以外の落語家でそんなことをできる人材がいるだろうか。落語というフレームに閉じこめられているかぎりは、「お笑い」を評価することはできないだろう。談志はそういう意味で最後の落語家になるのかもしれない。

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