運命とはなんだろう

運命とはなんだろう――大学生のときにちょっとした論文を書いた。いま思えばずいぶん青臭いものだが、内容はこんな感じだった。現時点で私が選びうる選択肢はいくつもあり、その枝分かれした先にはさらにいくつもの選択肢がある。このようにツリー状に広がった可能性は無限であり、現時点から未来を予測することは不可能だ。しかし、現時点から過去を振り返ってみれば、私が歩いてきた道は唯一であり、その他の無限の選択肢は存在しなかったに等しい。これは偶然といえば偶然だが、必然といえば必然だろう。このような状態を運命と呼ぶのである――。だからどうした?と言いたくなる内容だが、人生において、こんなベタなことが輝く瞬間があるということは、誰しも体験したことがあるのではないだろうか。

スラムドッグ$ミリオネア [DVD]

映画『スラムドッグ$ミリオネア』(08年、イギリス)は、運命についての物語だ。インドの人気テレビ番組『クイズ$ミリオネア』に出演したスラム出身の主人公・ジャマールは、難問の数々をクリアし、ついに最終問題までたどりついた。しかし、まったくの無学であるはずの彼が正解できるのはおかしいと不正の疑惑をかけられてしまう。彼が答えを知っているのはなぜなのか。ジャマールは、自らの生い立ちを語りはじめた――。監督はダニー・ボイル、出演はデーヴ・パテール、マドゥル・ミッタル、フリーダ・ピントーなど。第81回アカデミー賞で作品賞を含む8部門を受賞したほか、数多くの映画賞を受賞した作品。ストーリーだけを見るとクイズ番組のインチキを暴くようなものを想像するかもしれないが、これはラブストーリーであり、ロードムービーであり、社会派ドラマでもあり、そしてなにより運命を描いた作品である。この映画に対してご都合主義だと批判している人がいるが、笑止千万、まったく理解していない。そのご都合主義こそがこの作品のキモなのだ。運命というベタな言葉が輝く瞬間。エンドロールの素晴らしさは、個人的にオールタイムベスト。大傑作。おすすめ。

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